・シナリオ「クロール」 PC3〜4人、EXP〜100 ミドル4回 トレーラー: 這っても、 這っても、 あの日から逃げられない。 あの日視たものから逃げ出して、 一体どれくらいのあいだ、私は闇の中を這っているのだろう。 写真のように焼きついた記憶。押し殺した悲鳴がわだかまる喉。 思い出の中の光しか視えなくなった目。闇を掻く手。 手。 灰の中を掻く手。 ダブルクロス The 3rd Edition 「クロール」 ダブルクロス――それは、裏切り者を意味する言葉。 募集要項:開始日時未定(後日掲示板にて告知。早ければ来週金・土曜どちらか) 予定人数3〜4名(EXP〜100) NPC ボス:ジャーム・クローラー(灰丘 美咲) 15年前の放火事件で遺体が発見されなかった少女の成れの果て。 時空の裂け目、ディメンジョンゲート、ポケットディメンジョンを使ってN市郊外の住宅二軒へ移り潜む。 ざんばらの髪、煤だらけの扁平な身体、その身体の倍ほども長く伸びた手足、肥大化と裏腹に機能を失い白濁した眼球。 事件当時に屋根裏から目撃した光景――激しく口論する両親、殺人と放火――に取りつかれ、 新たな住処の住人を操って自身の記憶を再現しようとする。 15年の月日を経ても全く衰えることのない恐怖が、彼女を「屋根裏」に閉じ込めている。 ※クライマックスの戦闘で彼女を殺害しなければならない点は分岐なし。 ただ、後半のPCの何らかの行動をフラグとして、死亡時に追加の情報を出す。 ・屋内で成人の男女が二人きりになる状況を誘発させる。メンタルインベイジョン、生体侵入による操作。 ・身体の全部を屋根裏から出すことは出来ない。 ヒロイン:山岸のぞみ PC1の昔からの友人(詳細は未定)。 陶芸と音楽が趣味で、一人暮らしを始めるついでになるべく広い家を探していた。 オカルトは一切信じないタチで、今回隣家で起こった事件についても ただの心中事件と思ってまるで気にしていない。 ※PC1ヒロインとして、新居で事件に巻き込まれる。 シナリオ中何らかの判断を誤ると死亡する? 協力者:薬師神嶺鳳(ヤクシガミ レイホウ 本名玲子) 23歳女性。N市の生まれで、小学生までこの町で育ち、最近になってまた都心から戻ってきたらしい。 一見インチキじみた霊媒師稼業で生活しているようだが、実はオーヴァード。 自分には平安貴族風の出で立ちをした背後霊(Dロイス「奇妙な隣人」)がついていて、 「彼」の力で霊能力(オーヴァード能力)を身につけたと信じている。 レネゲイドウィルスやUGNの存在については全く知らない。 15年前に死んだ少女とは当時同級生で、 霊媒師の真似事を始めるきっかけも、クラスの人気取りの為に 「彼女の霊を呼び出す」と称して行っていた交霊術だった。今ではそのことに対して若干の後ろめたさを感じている。 霊媒師のアドヴァイス: ・15年前に殺された少女の霊が未だに一帯を彷徨っている。 ・遺体が発見されないのは火事による焼失ではなく、肉体もろとも霊魂が霊界、霊的次元へシフトした為。 人間の肉体を現世から丸々ひとつ消すというのは尋常な力ではなく、 このことから彼女が普通の霊よりずっと強力で危険な悪霊であることが分かる。 ・彼女は死んだ両親を未だに探し続けている。今回の事件で夫婦が死んだのは、 彼らを自分の両親と思い込み、自分の側(霊界)へ呼び寄せようとした彼女の仕業。 ・死んだ夫婦が自分の両親でないことに気づいて、彼女は怒り狂っている。 この行為(両親に似た人物を殺害すること)を続ければ続けるほど、彼女は凶暴化していくだろう。 ・彼女が両親の身代わりを殺害する為には、実際に彼女の両親が心中した状況を再現しなければならない。 彼女は自分が見た光景を忘れることが出来ず、何度でも同じことを繰り返そうとする。 つまり、彼女のテリトリー内で成人の男女が二人きりになった状況は最も彼女を刺激する。よって危険。 ・今彼女が居る家を取り壊したとしても、また別の家に移っていく。火にかけても駄目。 ・当然ながら霊は暗い場所を好む。床下、屋根裏、陽の当たらない部屋、そういった場所は特に危険である。 ・除霊の手段はない。唯一あるとすれば、自分が除霊に挑戦することである。 彼女の霊は極めて強力であり、対抗できるのは自分と自分の背後霊だけだ。という訳で自分を家に入れろ。 ・確実な除霊を行う為には彼女のテリトリーに侵入する必要がある。 彼女がはっきりと視覚化された状況で後を追えば、彼女の本体の居る霊的次元へ自分たちも移動できる。 焼け残った日記:15年前の事件で遺体の発見されなかった灰丘 美咲の日記帳。 ハンドアウト: PC1:成人のUGN関係者(イリーガル含む) 君の知り合いの女性が最近N市へ引越しをした。 新居は一人暮らしには少々広すぎる一軒家だが、ようやく趣味に使えるスペースが出来たと彼女は喜んでいる。 気になる家賃を訊いてみると、これが相場よりはるかに安い。 大家の話では少し古いだけで他に何の問題もないと言うが、能天気な彼女のことだ、 どうせ本当はろくでもない曰くでも付いた事故物件なのだろう。 それにしても彼女は嬉しそうだ。満面の笑みで新しい住所の書かれたメモを寄越す。 そこで突然、君の携帯電話が鳴った。電話に出ると、それはUGNからの新しい任務の連絡だったが……。 シナリオロイス:友人の一般人女性 PC2:UGNエージェントor支部長 N市で発生した、動機の見えない夫婦心中・放火事件。 警察による付近住民への聞き込みの結果、事件時現場となった住宅街の一帯では 何者かによって広域のワーディングが展開されていた可能性が浮上する。 オーヴァード能力者またはジャームの関与が疑われるとして、R担がUGNに捜査を依頼、 君はその捜査のリーダーに選ばれた。 捜査員召集の前日、君が本部としてあてがわれたUGN支部内の会議室へ機材を運んでいる最中に アールラボからの連絡が届く。警察から提出された、事件の遺留品の検査に関する質問だった。 シナリオロイス:姫宮由里香 PC3:UGN関係者(イリーガル含む) 君はN市の事件に関する捜査へ加わることが決まった。 その日、たまたま別の用事で事件のあった住宅街近くを訪れていた君は もののついでにいち早く現場を見ておくことにした。 焼け跡となった現場、現場の隣の空き地、そしてその更に隣、 事件から間もないというのに引越しのトラックから荷物を運び入れている家。 訝りつつも君が引越しの作業を眺めていると、突然現われたひとりの女が声をかけてくる。 「この家へ引越すのは止めておいたほうがいいよ」と……。 シナリオロイス:見知らぬ女性 PC4:警察関係者、あるいは警察と強いコネがありそうなUGN関係者 R担とUGNとの共同捜査が決まり、 組織間の連絡役に任命された君は、R担の谷刑事と共にN市警察署でUGN側へ提出する資料を整理していた。 そこへ所轄の鮫島刑事が、一冊のファイルを机に放り出す。 「今度の件と関係あるかは分からんが……」 ファイルに記されていたのは、N市で15年前に起こったある一家心中・放火事件。 事件の詳細な経緯は分からないものの、当時の関係者の証言、遺体の状態や状況から 妻の浮気が発覚したことから生じた、単純な心中事件として処理されていた。 だが奇妙な点がふたつ。 事件当時自宅に居たものと思われる、夫婦の一人娘の遺体が遂に焼け跡から発見されなかったこと。 そしてもうひとつは、15年前事件のあった家が当時、今回の事件の現場のすぐ隣に建っていたこと……。 シナリオロイス:鮫島公平 ・OP1 シーンプレーヤー:PC1 他PC登場不可 ※ヒロインの新居(N市西部の住宅街)について N市駅前の喫茶店。君は数年振りに出会った友人と、思い出話で盛り上がっていた。 そんな中ふと、N市西部の住宅街にあるという、彼女の新居へと話題が移る。 彼女の新居は古い一軒家、部屋数が多く、屋根のある車庫も付いているそうだ。 ようやく自宅で趣味の陶芸と音楽が出来るようになった、と彼女は喜んでいるが、 聞いていると、どうも一人暮らしにしてはずいぶん広い家らしい。家賃が気がかりになった。 彼女の仕事は特別収入が多い訳ではないが、そんな大きな家を借りて大丈夫なのだろうか? >家賃について尋ねる のぞみ「それがねー、なんと○万円なのよ! すごいでしょ!」 のぞみ「事故物件だと思うでしょ? でも木造で古いけどしっかりしてるし、日当たりもまあまあだし」 のそみ「ネズミとかゴキブリは業者の駆除が入ったばっかだから、アタシがちゃんと管理してればそんなでもないのかな」 のぞみ「アタシ虫とかすごい苦手な訳でもないし、あの広さなら全然我慢出来るねー」 >曰くや事件事故の経歴について尋ねる のぞみ「あー、なんか引越し決めた矢先にすぐ近くで事件あったらしくてさ」 のぞみ「でも夫婦の心中なんだって。強盗とかだったらちょっと怖いけど、心中だったら別に関係ないよね」 のぞみ「家賃安いのは事件の前からだねえ。もしかしたら昔自殺とか殺人とかあったのかも知れないけど……」 のぞみ「アタシ幽霊信じないし全然平気。むしろアタシの為に家賃下げてくれて幽霊さんありがとうって感じ? そりゃ悪いか」 突然、PC1の携帯電話が鳴る >断って電話に出る 電話はUGN職員からのものだった。新しい任務の依頼についての連絡だ……。 電話に出るとシーンエンド、OP2へ ・OP2 シーンプレーヤー:PC2 他PC登場不可 ※今回の事件について、簡単な情報を出しておく。最後にOP3、4への繋ぎとして「日記帳」の話題を出す。 君は、今回の捜査本部としてあてがわれた、小さな会議室の前の廊下に立っている。 廊下には必要な機材一式が既に揃っているが、捜査開始の前日、つまり今日中にこれら全てを部屋の中へ収めなければならない。 PCを何台も運び入れてセッティングしておくのは、オーヴァードの君にとってもいささか骨が折れそうだ。 >一旦切る ふと、廊下の先のほうから、小走りでUGN職員の男性が君に近づいてくるのが見えた。 彼の手には電話の子機が握られている。 UGN職員「PC2さん! ラボからこちらの捜査本部宛てに電話ですよ!」 >電話に出る 電話はアールラボの研究者、“ラフレシア”姫宮由里香からだった。 姫宮由里香「PC2さん? さっきN市警察から、あなたの捜査の関係資料が送られてきたんだけど……」 >PC2と顔見知りの場合 姫宮「ああ……最近こっちの支部で、潜伏中のFHセルのアジトに大がかりな捜査が入ったでしょ?」 姫宮「面白い症例があるからしばらくこっちに出向してこないかって、誘いがあったのよ」 姫宮「ま、押収品が多すぎて検査するにも人手不足、ってのもあったみたいだけどね……」 >続き 姫宮「事件現場の遺留品が、段ボールで何箱か。でもそのすぐ後に、小さい箱が一個追加で送られてきたのよ」 姫宮「但し書きだと別件の遺留品みたいなんだけど、こっちもまとめて検査しちゃっていいのかしら?」 >「別件」について訊かれる 姫宮「詳しいことは書いてないんだけど、こっちは今回の事件より古いものみたいね」 姫宮「押収されたのは19○○年……今から15年前ね。焼け焦げててよく分からないけど、子供の日記帳みたい」 姫宮「焼け残ったページもあるわね。でも、字が滲んでてこのままじゃ読めない。消防車の放水か何かで濡れたのかしら」 >検査を頼む 姫宮「了解、まとめて片付けちゃうわね」 ・OP3 シーンプレーヤー:PC3 他PC登場不可 ※薬師神嶺鳳登場。家(山岸のぞみの新居)について。 君は携帯電話で新しい任務への配属が決まったその日、偶然事件の現場近くを訪れていた。 もののついでだ、他のメンバーより早く、現場とその周囲を見ておこうか……。 >現場に来る 君は焼け跡となった現場を訪れた。 現場となった家は二階部分がほとんど焼け落ち、逆によく残っている一階の佇まいが、事件の悲惨さを引き立たせている。 周囲を見回すと、現場の右隣は空き地、左隣には大きな日本家屋が一軒、無傷で建っていた。 その家の前、住宅街の細い道に、引越し屋のトラックが窮屈そうに停まっている。 トラックのドライバーらしい男ともうひとりが、家の玄関で、携帯電話で誰かと話している。 引越し業者「あ、はい……分かりました。じゃ、ウチはとりあえず庭に荷物を降ろしておきますね」 どうやら引越し作業を始めるところらしい。 >業者に話しかける 引越し業者「あ、ええ、はい。こちらにお引越しのお客様がいらっしゃいまして……でも」 業者の男はふと、焼け落ちた隣家を見上げた。 業者「延焼がなくてよかったですねえ……火事のことはニュースで観ましたけど」 そう言って、業者の男たちは作業に戻っていく。 >続き 君が業者の荷下ろしを眺めていると突然、赤い着物を着た髪の長い女が君のそばまで歩いてきた。 女「あなた、この家に引っ越すの?」 女「止めておいたほうがいいわね。この家は……恐ろしいことになるわよ」 女「私は霊媒師をしているの。これ名刺ね」 女が懐から差し出した名刺には、「霊媒師 薬師神 嶺鳳」と書かれていた。 名前の横には、君の知らない神社だの、○○流三代目だのという肩書きが添えられている。 肩書きは仰々しいが、名刺を差し出す指の一本には、年齢と服装に似つかわしくないオモチャのような指輪が嵌っている。 >名前の読み 嶺鳳「ヤクシガミ・レイホウ、よ。とにかく、私の見立てだとこの家は危険だわ。悪霊が取りついているわ……」 >続き 嶺鳳「もしあなたがこの近くに住んでいるのなら、ここの人に引越しの取り止めを薦めてちょうだい」 嶺鳳「それとあなたも、なるべく早くこの辺りから家を移したほうがいいわね」 嶺鳳「またここを通ることがあったら、気をつけなさい。何かあったら私に連絡を。それじゃ、また……」 >訳を訊く 嶺鳳「この住宅街ではね、15年前にも事件があったのよ。その事件以来、恐ろしい悪霊が一帯に潜んでいる……」 嶺鳳「殺された少女の霊よ。8歳か9歳くらい、死んだ両親を探して彷徨っているわ」 >疑ってみる 嶺鳳「あら、あなたは感じない? ほら、この家から流れる不穏な空気を……」 嶺鳳がそう言ったかと思うと、突然、周囲に微弱なワーディングが展開される。 非オーヴァードなら重苦しい気分になったり、瞬間的な体調の不良を感じるかも知れない。 荷下ろしをしていた業者のふたりも手を止めて、辺りを見回している。 >ワーディングの発生源を辿る 展開されたワーディングの中心は、どうやら目の前に居る嶺鳳のようだ。 >ワーディング、その他オーヴァードの可能性に関する判定を行う ><RC>判定、難易度6 成功→ 君は霊媒師と名乗る女の背後に、ぼんやりと光る白い影のようなものを見た。 影は揺らめいて形もはっきりとしないが、人間くらいの大きさはあるようだ。 >達成値9以上の隠し情報→ 目を凝らすと、影は烏帽子と狩衣を着た、平安貴族風の人物のように見えてきた。 どうやら若い男性らしい。無表情で君と嶺鳳のことを見ている。 嶺鳳「あら、あなたにも彼が視えるの?」そう言って嶺鳳は微笑んだ。 嶺鳳「彼は私の守護霊よ。彼が視えるなら、あなたにはいずれ分かるわ。この家は危険だ、って」 ・OP4 シーンプレーヤー:PC4 他PC登場不可 ※15年前の事件について 君はN市警察署内の一室でR担の谷修成に手伝ってもらいながら、UGNへ持参する捜査資料を整理していた。 粗方の書類に目を通し、分類し、そろそろ肩も凝ってきたという頃だった。 所轄の刑事、鮫島公平が、一冊のファイルを片手に部屋へ入ってきた。彼は君を見て、 鮫島「そろそろ終わったか?」 谷「ああ鮫島さん、それかい? 昨日言ってたのって」 鮫島「そうです、15年前におれが担当した事件です」 鮫島刑事は、やおら持っていたファイルを君の机に投げ出した。 鮫島「15年前にN市で起きた、夫婦の心中・放火事件だ。現場は今度のやつのすぐ右隣だった」 鮫島「あのときは何の変哲もない事件に見えたし、今もおれはそう思ってる……が」 鮫島「あんたらみたいなスーパーマンが街中うろついてるってご時世だ。何があってもおかしくない」 鮫島「15年前の事件、妻の浮気が原因の心中事件だ」 鮫島「このときの夫婦には子供がいた。夫婦の遺体は現場に見つかったが、娘の遺体が発見されなかった」 鮫島「今回の事件に比べても火事の程度が大きかったからな。発見される前に灰になっちまったんだろうと思うが」 鮫島「現場が近い、状況も似てるっちゃ似てる。だから一応教えてはおこうと思って、な」 鮫島「当時の遺留品は、今回の事件のやつと一緒にUGNの研究所に送っといてあるからな」 鮫島「谷さん、終わったら後片付けはいいんで早めに撤収して下さい。悪いようだけど、こっちも周りの目ってのがありますからね」 鮫島刑事は部屋を出ていった。向かいの机に居た谷刑事は君を見て微笑むと、 谷「それじゃ、鮫島さんもああ言ってることだし、ちゃちゃっと片付けちまおうか」 ・ミドル1 シーンプレーヤー:全員 全員登場 UGN支部内に設置された捜査本部。機材と資料が揃い、捜査の準備は全て整っている。 >情報項目判定 >情報項目判定後 PC1の携帯電話が鳴り出す。画面を見ると、山岸のぞみからのようだ。 >電話に出る のぞみ「PC1? 助けて……今家に居るんだけど、何かヘンなの!」 電話口からはのぞみのひどく怯えた声と共に、何かがどたばたと駆け回る音が聴こえた。 子供の足音のような、或いは木の床を両の手で叩きまくるような……。 >物音について訊く のぞみ「天井の裏から! 天井の裏に何か居るの!」 のぞみ「家から出られないの! どうしてかは分からないけど、部屋のドアが開かないのよ!」 のぞみ「アタシ二階の奥に居る……早く、助けに来て!」 そこで電話は切れた。かけ直しても全くつながらない。 ・ミドル2 シーンプレーヤー:PC1 他全員登場 >家に駆けつける のぞみの家――そして事件現場周辺――に近づいていくと、ある瞬間から一帯にワーディングが展開されていることに気づく。 ワーディングは微弱だが、オーヴァードでない普通の人間を寄せつけない程度には威力がありそうだ。 その威力はのぞみの家に近づくにつれて強まっていき、玄関前まで来るとそれは一般人にはとても接近できないほどの濃度だ。 きなくさい、嫌な匂いが辺りを漂っている。 >家に近づく 微かだが、家の中、特に二階から何かがばたばたと走り回る音が聴こえる。PC1がのぞみの電話口で聴いた音だ。 人気のない住宅街には、その音以外は鳥の鳴く声すらない。 >玄関を開ける PCが玄関を開けた途端、先ほどから匂っていたきなくささが、強さを増してむっと鼻を突く。 屋内のワーディングの濃度は、手を出せば壁のように触知出来るかと思われるほどになっている。 その瞬間、とてつもない悪寒がPCを襲った。 同時に何かのイメージ―― 何処かの家の一室に血だらけで倒れた人物と、刃物を手にして立ちつくす人物、そのふたりの様子を天井の高さから俯瞰している―― がPCの脳裏に刻み込まれる。悪寒はすぐに引いたが、イメージはしばらく焼きついたままだ。 (Eロイス:孤独の叫び。一番先に屋内へ侵入するアクションをしたPCはロイス:家に潜む何か を慕情/●恐怖で強制取得) >屋内に入る 荷解きされていない荷物が廊下に出されている。電気は付いておらず、きなくさい匂いが家中に充満している。 騒がしい物音は、やはり二階から聴こえてくるものらしい。一階には誰の気配もないようだ。 >二階に上がってのぞみを探す 二階に上がった途端、音が止んだ。家の中が不意に静まり返る。 のぞみが言っていたらしい奥の部屋の前に来ると、部屋のドアにはべったりと黒い手形が付いていた。 人間の手形らしいが、五本の指の長さは人間離れしている。黒いものは、どうやら煤らしい。 >ドアを開ける ドアは抵抗もなくすんなりと開いた。部屋の中はカーテンを閉めきり、電灯もついていないので薄暗い。 ベッドが置かれているのを見るとここは寝室らしい。のぞみはベッドの足元の床に、電話の子機を手にして仰向けで倒れていた。 >倒れているのぞみに近づく のぞみに近づくと、彼女が半ば開いた唇から呼吸をしているのが聴こえる。 息はあるようだが、歯の隙間を通った細い息は無気味な音にも感じられる。目は閉じられ、顔色は青ざめている。 >のぞみに触れる(男性PCの場合) のぞみに触れた瞬間、彼女の前髪から、一本の長い髪の毛が生き物のように這い出す。 「それ」はのぞみの身体を素早く伝っていくと、PCの腕に登って巻きついた! エフェクト《メンタルインベイション》、技能<意志>で判定。こちらが勝利時シナリオ中の対象の行動を決められる。任意で解除。 ダイス:7r10+1 勝利時>PCは突然、目の前ののぞみに対して訳もなく激しい怒りを覚えた。同時に、のぞみが目を見開いて首を起こす。 のぞみ「そっかあ、気づいたんだ、今頃……」 PC「お前……!」 PCはのぞみの首に素早く手を伸ばし、その喉を締め上げた。じわじわと手に力が入っていく……! 他PCが止めに入る、引き離す>しばらくしてふっと、PCの、のぞみに対する怒りが引いていく。 のぞみの首を絞めていた手からも一気に力が抜けた。巻きついていた髪の毛も、力を失ってはらりと落ちた。 PCから解放されたのぞみは床に手をつき、激しくえづいている。 やがてのぞみの口から黒い塊がごろっ、と転がり落ちて、解けた。それは長い髪の毛の塊だった。 のぞみはえづくのを止めると再び倒れた。呼吸はしている、失神しているようだ。 敗北時>PCは一瞬、目の前ののぞみに対して激しい怒りを覚えた。が、それはすぐに引いていった。 巻きついていた髪の毛も、力を失ってはらりと落ちた。 すると突然、のぞみが起き上がり、その場で激しくえづき始める。 やがてのぞみの口から黒い塊がごろっ、と床に転がり落ちて、解けた。それは長い髪の毛の塊だった。 のぞみはえづくのを止めると再び倒れた。呼吸はしている、失神しているようだ。 >のぞみに触れる(女性PCの場合) のぞみに触れた瞬間、彼女の前髪から、一本の長い髪の毛が生き物のように這い出し、床に落ちた。 「それ」は素早い動きで床をくねって男性PCの足元まで来ると、その足に巻きついた! (以下ほぼ同上) そのとき、天井裏から何かが慌てて逃げていくような、激しい物音がした。 音はすぐに消えたが、依然としてワーディングは展開されたままだ。 >のぞみを連れて家を出ようとする 一階に下りると、二階よりもワーディングの強度が弱まっていることが分かる。 玄関のドアが開かない。向こう側から強い力で抑えられているようだ……。 >ドアを破る PCはドアを破壊した。が、砕けたドアの向こうにはまた一枚、同じドアが嵌っていた。 新しいドアはやはり開かない。破壊しても、また次のドアが現われるだけだ。 (エネミーエフェクト《時空の裂け目》 <知識:レネゲイド>で判定可能、難易度6) ※窓、壁その他家の外面全てに同じ効果がかかっている。出入りは基本的に不可能。 >脱出を試みるか、その他行動後 PC2の携帯電話が鳴った。アールラボの姫宮からだ。 姫宮「もしもし? 現場の隣の家に向かったって聞いてるけど、今はそこに居るのかしら? 状況はどう?」 電話は通じるが、ばりばりとノイズが入って聞き取りづらい。姫宮の側も同じらしく、電話口からは悪態らしい小声が微かに聴こえた。 応援を求める> 姫宮「恐らくバロール・シンドロームのエフェクトね、しかも強力な。面白……あ、いや、こっちの話よ」 姫宮「……分かったわ。私から連絡してそっちに救援を向かわせるわ。外から助けられるなら、いいけど」 電話の用を訊く> 姫宮「ウチに来てた遺留品の件で、報告したいことがあるのよ」 姫宮「15年前の事件のほうの遺留品ね。子供の日記帳……EXレネゲイドウィルスが検出されたわ」 姫宮「それだけじゃないの。今電話をかけた理由なんだけど、その日記帳のEXレネゲイドが、一時間ほど前から急激に増殖・活性化を始めたのよ」 姫宮「もっと早くに連絡したかったんだけど、ワーディングまで張り始めたもんだから専用のドラフト見つけて放り込むのに手間取っちゃって」 姫宮「検査結果も出たわ。珍しいことに、はっきりとシンドロームが発症してる」 姫宮「シンドロームはエグザイル、そしてバロール。あと、僅かだけどサラマンダーも発症してるわ。トライブリードね」 姫宮「ところでEXの感染源は色々だけど、日記帳っていうモノを考えたらその所有者が感染源と推測するのが自然じゃない?」 姫宮「これはあくまで仮説なんだけど、感染源のオーヴァードと日記帳のEXが、何らかの形で『共鳴』してるのかも知れない」 姫宮「更にこれは仮説なんだけど、現在の定説じゃ15年前はトライブリードはまだ発生してないはずでしょ?」 姫宮「15年以上前に日記帳に感染・繁殖したEXが、トライブリードに覚醒する……その元所有者に共鳴して、ね」 姫宮「つまりこの日記の所有者は15年前から今まで生き続けていて、そいつがあなたたちを閉じ込めてる……今の段階じゃただの妄想だけどね」 姫宮「手元にあるデータから話せるのは、これくらいね」 姫宮「電話が通じるなら、外に居る人間を使って調査は出来るわね。それで相手の正体をある程度掴めないかしら?」 姫宮「こっちは例の日記帳、もっと調べないと……それじゃ、健闘を祈るわ」 姫宮はそう言ったきり、一方的に通話を切ってしまった。 ・ミドル3 家の中はしんと静まり返っている……。 >再調査・情報項目判定を行う ・ミドル4 >情報判定後 玄関のインターホンが鳴った。 インターホンに出る>インターホンの応答のボタンを押すと、PC3には聞き覚えのある女の声が聴こえてきた。 「ごめん下さーい、誰か居ませんかー?」 ……薬師神嶺鳳だ。 何しに来た? どうやって入った?> 嶺鳳「あなた、あのときの?」PC3の声を聴いて少し驚いたようだった。 嶺鳳「心配になって、また来てみたのよ。すごい霊気を感じる……やはり、彼女が目覚めたのね」 嶺鳳「私のような高位の霊媒師にしか、この家の除霊は出来ない。入れてもらえるかしら?」 断る> 嶺鳳「……一刻の猶予もないのよ! とにかく入るからッ!」 鍵をかけようとする間もなく、ドアが開いて着物姿の嶺鳳が入ってきた。 ドアは彼女が家に入るなり、ものすごい勢いで勝手に閉まってしまった。 受け入れる> (脱出に失敗していた場合)ドアはあっさりと開いたが、嶺鳳が入るとすぐに勝手に閉まってしまった。 嶺鳳「どうやら二階のようね、さっそく除霊を始めるわ! 危険だからあなたたちは一階に居て」 彼女はそう言うなり、まっすぐ階段のほうへ歩いていった。止めるべきか、やらせてみるべきか……。 出られなくなったことを教える> 嶺鳳「そうね、まずはあなたたちが出られるようにしないと……」 彼女は自分が入ってきたドアを振り返ると、懐から取り出した小瓶の水やら塩やらを撒きつつ、祝詞を唱えた。 嶺鳳「これで出られるわ!」 彼女は自信満々でドアを開けようとする。が、開かない。 何度もノブを回したり、肩でドアにぶつかったりしているうち、彼女の顔がだんだんと青ざめてきた。 嶺鳳「お、思った以上に強力な悪霊ね! 仕方ない、すぐに除霊するしかないわ!」 >指輪のヒント(嶺鳳が二階に上がる前にもめていると発生、情報項目の開示状況次第) PC2の電話が鳴った。また、ラボの姫宮からだ。 姫宮「まだ出られそうにない? さっき言い忘れてたことがあってね。脱出するなら、乱暴だけど単純な方法があるわ」 姫宮「エフェクトの使用者を殺害すればいいのよ。同じバロール・シンドロームの能力なら、敵の本丸がある異空間に侵入出来るかも」 姫宮「それが出来ないなら、向こうに本丸から出てきてもらうか、出入り口を開けてもらう必要があるわね。こっちから引きずり込まれるとか」 姫宮「こっちから敵を刺激して、関心を引くことね……それと、例の日記帳の文章の一部が復元出来たわ」 姫宮「ヒントになるかしら? 読むわね。復元出来たのは最後のページ、事件の前日の日記…… 『8月1日 日よう はれ、のちくもり ……(前半部分は損傷が激しく判読不能)…… 明日は月よう日で、スイミングスクールがありますが、正じき行きたくありません。 今習っているクロールは苦手だし、明日の先生はこわいまるやま先生なのでいやになります。 パパもママも朝から出かけるので、さぼってしまおうと思います。 家にはわたしだけになるので、やっとたのしみにしていた屋ねうらの探けんができます。 スイミングスクールでれい子ちゃんから、おねがいしてたユビワをもらうやくそくだけど、 あさってもスイミングスクールなので、そのときにもらえばいいよね?……(以後、判読不能)』」 姫宮「この日記が持ち主と共鳴してるかもって話、さっきしたわよね?」 姫宮「日記帳のEXが活性化しているのを見ると、これは持ち主にとって大事な『最後の平穏な日常の記録』ってとこかしら?」 >日記の移送を依頼する 姫宮「EXの活性化は依然進行中だし、安全面を考えると今ラボから持ち出すことは難しいわ……準備してみるけど、時間かかるわよ?」 >嶺鳳に指輪のことを訊く 嶺鳳の顔が一瞬青ざめる。しかし、直後に見せた表情は「やはりそうか」という顔だった。 彼女は天井を見上げて、何者かに話しかける。 嶺鳳「美咲ちゃん……なのね? まだ、この指輪のこと憶えてる?」 嶺鳳が指輪を外した途端、二階で何かが木の板を突き破るけたたましい音がした。ワーディングの範囲が二階のほうへ急激に狭まっていく。 >嶺鳳に除霊させる(※姫宮の電話直後に発生) 二階から、嶺鳳の悲鳴と共に、何かが木の板を突き破るけたたましい音が聴こえてきた。ワーディングの範囲が二階のほうへ急激に狭まっていく。 ※もし嶺鳳登場直後なら、ここで姫宮の電話が入る。敵の居る異空間へのゲート開放の可能性について。 >時間切れ 失神していたのぞみが突然起き上がったかと思うと、二階に向かって階段を駆け上がっていった。 二階の奥の部屋でドアを閉める音、その後に、何かが木の板を突き破るけたたましい音が聴こえてきた。 ワーディングの範囲が二階のほうへ急激に狭まっていく。 >二階に上がる 一行は階段を上がっていく。充満していたきなくささはより一層強まり、むせ返るようだ。 そして二階のワーディングの強度は、常人を一瞬で気絶させるであろう威力にまで高まっている。 奥の部屋からは何かが暴れる音、それに混じって、誰かが過呼吸のように苦しげに息を吸い込む音がする。 あるいは、押し殺した悲鳴のように聴こえなくもない。 二階に上がると、元々電気が落ちていて薄暗かったのが、何故だかまた一段と暗くなったように感じる。 よくよく目を凝らせば、二階の廊下中の壁、天井、床にところかまわず、あの黒い煤の手形がなすりつけられていた。 暗がりではまるで全体が、黒く塗り潰されたようにさえ見える。 >侵食率低めの場合 (Eロイス:衝動侵食 全員あるいは侵食率の低いPCに衝動判定。失敗時衝動:恐怖が発動) >判定失敗 肉体的苦痛とさえ錯覚するほどの悪寒がPCを襲う。進むにも逃げるにもとにかく足がすくみ、その場から動けない……! (RPで解除して、先に進んでもらう) >嶺鳳が居る場合 ふと見ると、嶺鳳が階段の途中にうずくまって動かない。 >指輪ルートの場合 震える手で、PCたちに指輪を差し出した。 嶺鳳「私には……とても無理……後、お願い……」 >二階の奥の部屋 >指輪の場合 寝室のドアを開けた途端、PCの鼻先を何者かの腕が掠める。その腕は、天井を破って大きく開けられた穴から伸びていた。 煤まみれの茶色く汚れた細く長い腕が、狂ったようにぐるぐると空を掻いている。穴の奥は真っ暗で、腕だけが宙から生えているようだ。 >指輪を示す 天井から伸びる腕が、指輪を持ったPCの手首を掴んだ。とてつもない力で天井まで引き上げられる! >指輪以外 寝室のドアを開けた。PCの目の前には人間の足が二本、目線ほどの高さにぶら下がっている。 それは のぞみ/嶺鳳 の足だ。ずりっ、ずりっという音と共に、彼女の足は引き上げられていく。 見上げると、天井には木板を破って大きな穴が開けられていた。 そこから伸びた無数の細い人間の腕が、ぐったりとしている彼女の身体を掴んで、穴の中に引き込もうとしている。 >ヒロインの足を掴む PCが彼女の足を取った途端、彼女を掴む天井の腕の引きが一気に強まった。 彼女ごと、天井裏へ引き込まれていく! ・クライマックス >天井裏に引きずり込まれる。 君たちを引きずり込んだ腕は、天井の穴を抜けたところで君たちを放り出した。 君たちが投げ出されたのは、埃だらけの木板の上だった。それは天井板らしく、格子が切ってあった。 ヒロインは君たちと同じく投げ出され、気絶したまま近くに倒れている。 見回すと、ほうぼうの床から白煙と共に火の手が上がっており、耐え難い熱さを感じる。 炎に照らし出されたその空間は、恐ろしく広いように見えた。まるでどこまでも続く、巨大化した天井裏のようだ。 君たちの足元から、誰かの罵り合うような声が聴こえる。会話の内容までは聞き取れないが、それは大人の男女の声だ。 >時間があれば 30メートル以内で陣形を組んでもらう やがて、遠くから「何か」が木床の上を、君たちに向かって素早く這ってくるのが見えた。 「何か」が君たちの前まで這い寄ってくると、その姿が火に煌々と映し出される。 ざんばらの髪、アンバランスなほど大きな頭部、真っ黒なぼろきれに身を包んだ扁平な身体、その身体の倍ほども長く伸びた手足。 「何か」が君たちのほうへ頭をもたげた。 裂けた口からは、二階に上がったときに聴こえたのと同じ、苦しげな呼吸音が漏れている。 呼吸と共に漏れ出す黒い煙は、どうやら霧状になった微細なバロールの「魔眼」のようだ。 髪に隠れた顔の中から、瞳のない、膨れ上がったふたつの眼球が君たちをねめつけた。 ジャームの放つ瘴気が一挙にしてPCたちに襲いかかる。 →衝動判定 ・戦闘 [ジャーム]―30M―[リィラ/タカオ]―30M―[ビアンカ/龍代] >戦闘終了 PCたちの攻撃に倒れたジャームの身体が、瞬く間に燃え出した。 と、PCたちの足元の床が大きな音を立てて割れ落ち、PCたちは床に開いた裂け目に落ちていった。 落ちた先は、元居た二階の寝室だった。 割れた天井板と大量の埃と共に、PCたちは床やベッドの上へ落下する。 そこで天井からばさっ、という音と共に、真っ白な灰のようなものが、誰も居ない床の上に降ってきて小さな山を作った。 >指輪ルートなら 灰の山の上には小さなオモチャの指輪が、半ば埋もれて落ちている。 ・ED1 シーンプレーヤー:PC1 他登場不可 >指輪・嶺鳳ルート のぞみは現場に駆けつけていたUGN救護班の手で、すぐにN市の大学付属病院に運ばれた。 彼女はその日の内に病院で目を覚ましたが、訊くとPC1に電話する直前の時刻から病院まで、全く記憶がないと言う。 病院スタッフのUGN関係者によって適当な病名が付けられると、三日後には退院させられた。 実際のところ健康状態には全く問題はなく、オーヴァード能力の覚醒等も起こらなかったようだ。 その日、退院したばかりののぞみからPC1に電話がかかって来た。 のぞみ「引っ越したばっかの家でいきなりぶっ倒れるなんてビックリしたよ。やっぱ祟りとかかねえ?」 のぞみ「まー何かもう大丈夫らしいし、やっとひとり暮らしをエンジョイ出来るはずなんだけどねえ……」 そのとき、電話口からいきなり、何かがどたばたと家の中を走り回る音がした。 のぞみ「あ、聴こえた? 何かイタチが屋根裏に入ってきちゃったみたいなのよ」 のぞみ「自力で追い出そうかとも思ったけど、噛まれたりしたら危ないっていうから駆除の業者呼んだとこでさ」 のぞみ「まーちょっとボロい家だけど、仕事空いたら遊びに来てよ! みんな呼ぶからさ……」 >のぞみルート ジャームと化した灰丘美咲を倒した後すぐ、のぞみは現場に駆けつけていたUGN救護班の手で、N市の大学付属病院に運ばれた。 のぞみはその後数日のあいだ昏睡状態にあったが、一昨日になって急に意識を取り戻したそうだ。 彼女がオーヴァードに覚醒した可能性を調べなければならないため、退院はまだ先になるが 今はもうしっかり受け答えも出来るということで、PC1は病院へ彼女を見舞いに訪れた。 PC1が病室に入ると、のぞみはベッドに寝そべっていた。目は覚めていて、PC1の姿を見ると嬉しげに微笑みかけた。 しばらく話してみると、あの日ののぞみの記憶は途切れ途切れで、ほとんどのあいだ「夢を見ていた」気がすると言う。 のぞみ「すごく怖くて、哀しい夢だった。女の子が天井裏に潜って、板の隙間から何処かの部屋を覗いてるの」 のぞみ「そこには女の子のお父さんとお母さんが居て、お父さんが包丁で、お母さんを……」 のぞみ「変だよね、天井裏に居るところから始まるのに、お父さんもお母さんも、それまではすごく優しかったって感じがするのよ」 のぞみ「それまでは普通で、幸せな家族だったのに、どうしてこんなことに……って、すごい絶望感でさ」 のぞみ「ねえ、アタシあの家に戻っても大丈夫かな?」 のぞみ「あ、そうだ……お礼を言うの忘れてたね。ありがとう、助けに来てくれて……」 ・ED2 シーンプレーヤー:PC2 他登場不可 UGN・N市支部。その日、PC2はアールラボから呼び出しを受けていた。姫宮由里香からPC2に渡したいものがあるそうだ。 支部内のこじんまりとした研究室では、白衣姿の姫宮がPC2を待っていた。 姫宮「ごめんなさいね、呼び出したりして」 彼女のデスクには段ボール箱が一個、置いてある。姫宮はその箱を取って、PC2に手渡した。 中身は小さな骨箱と、ビニールの真空パックに収められた、焼け焦げた日記帳だった。※のぞみルート以外なら指輪も 姫宮「あなたたちが処理したジャーム……恐らく灰丘美咲、の遺灰と遺品。どちらも検査済み。外部に出しても問題ないわ」 姫宮「こっちで処分しようかとも思ったけど、N市警察の鮫島って刑事から、要らないなら寄越して欲しいって話があったみたいで」 姫宮「あなたからN市警察に送るか持ってくか、してもらえるかしら?」 姫宮「そうそう、日記帳のEXだけどあの後……あなたたちがジャームを処理した辺りの時刻から一気に死滅しちゃって」 姫宮「あれだけでもいいデータは取れたんだけど、研究者としては今少しの成長を見たかった……ま、仕方ないかしらね」 姫宮「何はともあれ、面白い症例に触れさせてもらって感謝してるわ」 ・ED3 シーンプレーヤー:PC3 他登場不可 >指輪・嶺鳳ルート 君が用事でUGN・N市支部に居たときだった。ジーンズにジャケット姿の薬師神嶺鳳が、突然PC3を訪ねてきた。 聞けばあの後UGNから彼女に、レネゲイドとオーヴァードに関する説明、 そしてUGNへの勧誘があったそうだ。彼女はUGNエージェントとして働く決意を固め、今日にも訓練が始まるとのこと。 嶺鳳「それで、何と言ったらいいか……とにかく、あのときはありがとうございました」 嶺鳳「……あの家に美咲ちゃんが居るっていうのは、最初はほとんど出まかせだったんですけどね」 嶺鳳「子供のとき、あの子が突然居なくなって……最初は寂しかったはずなんだけど、結局自分が学校で目立つ為のダシにしちゃって」 嶺鳳「大学卒業してこっち戻って、その途端にあの事件があったら、急に罪悪感涌いてきてね」 嶺鳳「そしたら何でかムキになっちゃって、じゃあいっちょ私が救ってやるか、なんて……返すがえすも恥ずかしい話です」 嶺鳳「まーとにかく霊媒師なんてもう卒業! これからはここ、UGNの下で、平和を守るエージェントとして頑張ります! よろしく先輩!」 嶺鳳はぐっとPC3の手を握った。 ※OPで背後霊に気づいていたら>そのときPC3の目には、彼女の背後の「守護霊」が肩を竦めて苦笑いしているように見えた。 目を凝らすと、影は烏帽子と狩衣を着た、平安貴族風の人物のように見えてきた。 どうやら若い男性らしい。無表情で君と嶺鳳のことを見ている。 >のぞみルート ジャームと化した灰丘美咲を倒してから数日後、君がN市の街中を歩いていると、見覚えのある着物姿の女が声をかけてきた。 薬師神嶺鳳「私のこと、忘れてないわよね」 嶺鳳「あれから、あなたの組織の人に色々と話をされたわ。私と『彼』の力のことね」 そう言って彼女は自分の背後を指差した。 嶺鳳「正直言ってまだ信じられないけど、とりあえずイリーガルとか言う立場で仕事をもらうことになったわ」 嶺鳳「この後も溝口って人に会う予定なの。今度は同僚として、あなたに会うことがあるかもね」 嶺鳳「会ったついでに、これを受け取ってくれないかしら?」 嶺鳳は、指に嵌めていたオモチャの指輪を外して差し出す。 嶺鳳「あのときは渡せなかったけど、これ、美咲ちゃんのもの。彼女に返してもらえる? あの灰と一緒に、同じお墓に入れてあげて……」 ・ED4 シーンプレーヤー:PC4 他登場不可 君は事件解決の報告、そしてPC2(のぞみルートならPC2・3)から預かった物品を引き渡す為、 N市警察署の鮫島刑事を訪ねていた。相変わらず愛想のない刑事だったが…… 鮫島「……これが例の遺灰と、こっちはおれが送った遺留品だな」 鮫島「指輪……おれは見覚えがないが、これも彼女の遺品か?」 鮫島刑事は段ボール箱を担いで立ち上がると、 鮫島「なんなら少し付き合うか? こいつを納骨しに行くんだ」 警察署を出ると、裏の駐車場からパトカーではなく刑事の自家用車らしきセダンに乗り、鮫島刑事の運転へ何処かへ向かっていく。 鮫島「知り合いの寺に世話してもらう。ウィルス絡み、それも15年前の事件となると、身元不明者として処理するしかないからな」 鮫島「出来れば両親の墓と一緒にするのがいいんだろうが……事件のことを考えると、それもな」 鮫島「第一、両親の墓も別々だしな。母親が東京、父親は確か九州の何処かのはずだ」 鮫島「今更遺族に何と言って渡せばいいのかも分からんし、こうするしかないだろう」 目的地の仏寺に着くと、鮫島刑事がひとりで段ボール箱を持って入っていった。 PC4が待っていると、それほど時間もかからずに、刑事が手ぶらで戻ってきた。 鮫島「無縁仏ってことで、他の荷物と一緒に埋めてもらうことになった」 鮫島「さて、帰るか。送ってやるから車に乗ってくれ」 刑事は車を出し、来た道を戻り始めた。不意に、運転席の刑事が口を開く。 鮫島「おれの想像じゃ、灰丘美咲は事件のあったとき天井裏に隠れてたんだろう。言い争いが始まる前か後かは知らんが……」 鮫島「それで、天井裏から父親が母親を刺し殺す場面を見た。ショックだったろう、馬鹿な親父がガソリンを撒き始めたときにも、天井裏から動けないままだった」 鮫島「そして、逃げる暇もなく火にまかれて死んだ」 鮫島「そう、灰丘美咲は15年前に死んだんだ。で、あんたらが片付けた化け物は……」 言葉を切り、かぶりを振る。 鮫島「……おれはR担やUGNの人間が言う、オーヴァードだのジャームだのなんてものは未だに信じられん」 鮫島「そんなものが出てくる前から世の中はろくでもないことで一杯だったし、守るべき平和な日常、なんてのも変わらず紙一重だったろうに……」 鮫島「……しかし、まあ何だ、15年前おれが遂に見つけられなかった被害者を、あんたらがとうとう見つけ出した。その礼は、言っておこう」